楠森堂ブログ

「いただいたお茶があまりにも美味しくて…」 という嬉しいお電話が_(_^_)_

在来種のお茶

「いただいたお茶があまりにも美味しくて… こちらで購入できますか?」というような嬉しいお電話を、昨年秋以降、度々いただきます。
昨年夏と秋に九州沖縄や全国にて放送されたドキュメント番組(BS-TBSサタデードキュメントなど…)がきっかけとなり、多くの方に希少な在来茶の存在を知っていただけたからだと思います。
その在来茶の美味しさの秘密とは…
今年の年明け、西日本の歴史・自然・人をさまざまな視点で捉え紹介する地域文化誌『西日本文化』を発行する「西日本文化協会」からの寄稿依頼で〝在来茶の茶摘み〟をテーマに書かせていただき、最近発行されたばかりの春号。
その巻頭を飾る(^^)vフロントエッセイを読んでいただければ〝在来茶の美味しさ〟を分かっていただけるかも (^^?
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front essay
「在来茶の茶摘み」 
河北幸高
今年も茶摘みの時期が近づいてきた。
福岡県うきは市浮羽町山北大野原地区一帯に広がるお茶畑。面積は約五㌶(一五〇〇〇坪)。
このお茶畑を見渡すと、一般的なお茶畑と比べて少し景色が違う…と言っても茶農家や専門家でなければなかなか見分けが付かないかもしれないが。
その一般の茶畑との景色の違いが一番分かるのが、徐々に暖かさが増し、新芽が萌え始める四月初旬。
一般に見られるお茶畑は、一面同じ緑一色、新芽も均一に揃って育っている(単一品種の茶園)。
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一方、ここ山北大野原地区の茶畑は、芽立ち、芽の色、成長の度合いが株ごとにすべて異なっており(固有種)、畑一面緑の濃淡がある。その畑の芽吹いたばかりの新芽の先の方だけを摘み、生葉を味わってみると、株ごとに甘み、苦み、渋みのある芽など、風味もさまざまに異なっていることが分かる。
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【左】品種茶園 「やぶきた種(単一品種)」。 【右】在来茶園。
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私が栽培するこのお茶畑、五㌶の畑の大半が全国的にも希少な日本古来の〝在来種(:古来より日本に生息・生育していた動植物のことで「自生種」「野生種」ともいう) 〟 の茶畑だ(在来茶)。
在来茶とは、日本の山里に昔から自生するお茶や、平安初期、中国に渡った僧侶たちによって日本に伝えられた茶の種から育てた(実生/みしょう:種子から発芽した植物)品種改良をされていない日本古来のお茶のこと。
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平安初期(八一五年)に我が国に茶が伝来して以来、一九八〇年代ころまでの約一二〇〇年もの間、日本人が味わってきたお茶でもある。
現代では農業技術が飛躍的に発達し、「やぶきた種」(国内の茶園栽培面積の七割以上を占める品種)に代表される挿し木苗から育てた、外観、生産性に優れた改良品種(品種茶)の茶葉が流通を占め、在来茶を守り続ける農家は全国的に極めて少なく、生産量が限られた希少なお茶となってしまった。
在来園から品種園への転換
このように説明すれば昔飲んでいたお茶を思い出す方もおられるのではないだろうか…。「むかし、急須で淹れるお茶は苦渋味があって、お茶の葉を入れかえなくても何煎も出ていたな~」というのが在来茶である。
茶樹の育つその土地の気候・風土に適応した無数の貴重な固有種の茶樹が混生する在来茶園で育った新芽を〝合わせて 〟 摘み採ることで、現代の均質な改良種(単一品種)のお茶では作り出せない、その土地特有の個性豊かな「天然ブレンド」のお茶ができあがる。
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昔ながらの味を今に伝える在来茶。
お茶を口に含んだときに広がる深い余韻の残る奥深い味わい…。
お茶の歴史に想いを馳せて味わってみませんか。
(かわきた ゆきたか・楠森河北家二十八代目。楠森堂代表/茶農家。うきは市在住)
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