楠森堂ブログ

 100%茶柱が立つお茶!?

在来種のお茶

先日仕事の休憩中、車のラジオを聴いていましたら… 茶柱が100%立つ (・・? という商品が開発され、その商品がヒットしているという話題が特集され、実際にラジオのパーソナリティーが試飲する様子も放送されていました。
どの様な商品か興味があり、早速帰ってネットで確認…
その商品名は「茶柱縁起茶」。 (「テレビ特集映像」もありました!)
この「必ず茶柱が立つ」というお茶…
粉末茶と人工の茎1本が薬のようなカプセルに詰められ、湯のみに注ぐと茶柱の立つ鮮やかなグリーンのお茶が出来るそうです。
これは縁起が良い!!ということで、受験生を持つ家庭をはじめ、一般企業や旅館などからも問い合わせが相次いでいるそうです。
また、お茶の粉末を加工してできた茶柱は、頭に浮力を持たせ、下を重くすることで茶柱を必ず立たせる… というこの会社独自の製法は、特許も申請中だという事です。
色々な発想をされますね~
昔からお茶を飲む時に茶柱が立つと縁起が良いと言われてきました
しかし現代では、簡単便利なペットボトル飲料などのお茶が普及し、急須で飲むリーフ茶の消費が年々落ち込んでおり、茶柱自体に出逢う機会が無くなってきました。
また現代のリーフ茶の茶葉では、ほとんど茶柱が立つことはありません。
その要因として…
今から30年数年前、まだ国内に流通するお茶の約半分は「在来種のお茶」でした。
在来園から品種園への転換
下の資料のように昔ながらの在来茶園は、茶樹1本1本の生育する時期が異なり、茶摘みの際、早生品種など生育が進んで葉や茎が固くなった「硬化」した新芽も同時に刈り採ってしまうことから、出来上がった製品には茎(白茎)が多く混入していました… 入っているのが普通でした。
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一方で、現代の品種化された茶園では新芽が均一に育つために、柔らかい新芽の部分だけを摘むことが可能で、在来茶と比較すると、製品への茎の混入は格段に少なくなりました。
下の画像は、我が家で普段に飲む「在来種!荒茶仕立て」の茶葉!
茎がたくさん入ってます(^^)!
茎茶特有のさっぱりした味わいや、濃厚な粉茶、そして様々な品種が溶け合う天然ブレンドの在来種の茶葉。
見た目はかなり粗いですが、色々混ざりあったお茶は味に深みがあり美味しいんですよ!
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見た目は少々悪くても、作ればなんでも売れたひと昔前…
しかし、時代の流れとともに、現代では製品の見た目を重視…
茎が多いお茶は下級茶とみなされ、最近の製品には「茶柱」となる 茎 自体が入っていません。
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また、製品を仕上げる工程で、色彩選別機(色選機)という機械に茶葉を通すのが今では一般的となっています。
この「色選機」という機械は、緑色の茶葉以外の茎(白)や枝(赤)などを判別し、ピンポイントで機械に流れる茶葉の中からエアーで弾き出し除去するという機械です。
…ということから、一般的に市販される現代のリーフ茶は、茎がほとんど混ざっていない深い緑色一色の茶葉なんですね。
ちなみにこの機械… 価格が数百万~1千万円程もするという高価な機械なんです
また… 例え茶葉に茎が混ざっていたとしても、最近の急須は網の目が細かいメッシュ状となっており、湯のみに茶葉や茎が入ることが無いので、茶柱が立つこともありえないのです。
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昔の急須はこのように、網の目が大きいものでした。
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自家用の茎入りの茶葉を使って、この両方の急須で淹れ比べてみましたヒマ人です(^_^;)
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もちろん右側が昔ながらの網の目の大きな急須で淹れたお茶です。
網の目をかいくぐって出てきた数本の茎の内、惜しくも1本が立ちそうで立ちませんでした… 残念
このように「茶柱」は滅多にお目にかかれない珍しい現象ということで、「吉兆」だとされる由縁があると思いますが…
昔は、飲み物といえば「お茶」か「牛乳」でした。
現代では健康ブームも拍車をかけ、様々な種類の飲み物が市場に溢れ、その多くの中からお茶や牛乳を選ぶような若い世代は少数派…
お茶などの飲み物に限らず、多くの農作物が、消費を促すため、消費者に少しでも関心を持ってもらうために、誰でも口にしやすい味、機能性のある多彩な品種の開発… 消費者の細かいニーズに応え、企業や生産者は簡単便利に飲んだり食べたりできる製品の開発を競って行っています
インターネットなどメディアで流れる莫大な情報… 情報操作…
それにより次々に変化する消費者のニーズ…
その流れに振り回される生産者…?
食べやすい。飲みやすい、見栄えがいい…
機能性のある多くの品種の開発(品種改良)や、様々な製品などが生み出される陰で、農作物が本来持つ栄養価や味わい、また、古来より伝えられてきた貴重な文化もだんだん壊れていくように感じます…
数年前に就農したばかりの私から今の農業の厳しい状況を見ると、その消費者のニーズを作り上げている原因には、メディアの影響ももちろんありますが、農家の方の出す情報、取組みなども大きく影響しているように思え、自ら首を絞め厳しい状況に追い込んでいるように思えます
また、農業に限らずすべての事に関して、
簡単、便利、省力、効率化…
聞こえの良い言葉ですが、この言葉の裏では…
自然、動植物、文化、地域や人の繋がり… など、何かが必ず犠牲となり、失われていくようにも思えます…
私ももちろんのこと、誰しもが少なからずその時代の流れに乗っているはずです。
順調に事が進む間は気づかないもので、何か問題が起きて初めてその大切さや価値に気づくものなんでしょうね
                                    
● 河北家で300年以上続く竹垣を修復する伝統行事「壁結い」の日程が決定致しました!
3月3日(土)午前8時 作業開始 昼過ぎには作業終了予定
※ 小雨決行 荒天順延  お問い合わせは… 0943-77-4019 河北
見学、飛び入り参加も、もちろんOKです
クリック! 昨年春の「壁結い」作業風景 (H.23年3月5日)
クリック! 昨年秋の竹切り作業風景  (H.23年10月4日)

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